禾の養鶏部門、しばらくおやすみします。

2022年12月15日

来年1月に今いる鶏を屠殺し、禾の養鶏部門はしばらくおやすみとすることにしました。

定期便のお届けは12月いっぱいとし、1月の屠殺の日までのたまごの販売はオンラインショップでの個別販売とする予定です。定期便でご購入いただいていた方にも、個別販売で買っていただいていた方にも、冬の間は産卵が少なくなりますが春には産卵数が増える見込みであるとお伝えしていたのに、突然、鶏を屠殺します!というお知らせになってしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

この決断をするまでに、かなり長い期間悩んでいました。

1番の理由は、現在私が第二子を妊娠中であるためです。出産予定日は4月で、幸い妊娠の経過は順調です。妊娠がわかってから、鶏の飼育について継続が可能かどうか、夫とも何度も話し合い、私自身もずっとそのことばかり考える日々でした。ある時には、こうすれば続けられそう!と前向きな気持ちになったり、またある時には、あああ、やっぱり無理だよ‥と絶望的な気持ちになったり。直接お会いする人には、毎回言ってることころころ変わるな~と思われていたと思います。

ただ、決断の締め切りは12月まで、とうっすら考えていました。やめるにしても、継続するにしても、諸々の準備を出産までに終えるにはそこで決めないと間に合わないからです。

そして最近、夫と喧嘩しました!継続のつもりで徐々に夫に仕事の引き継ぎをしようと思っている私と、引き継ぐ気持ちはあっても穀物部門の仕事もしなきゃいけない夫。もっと積極的に鶏の仕事やってよ!という私と、私と全く同じようにはできないよ!という夫。私自身は日に日に膨らんでくるお腹や体調の変化に焦っていた一方、夫は農繁期の作業は終わったとはいえ、お米やお餅の販売に忙しく、すでに鶏のエサ作りも一人でやってくれていましたし、動けない私に代わって息子とよく遊んでくれていて、いっぱいいっぱいでした。そんな余裕のない二人でぶつかってしまいました。

そんな喧嘩をしてわかったのですが、私はこの事業を誰にも引き継ぎたくなかったのです。

2021年の春から飼い始めた100羽の雛たち。養鶏としてはとても小規模ですが、自給用とは勝手が違い、それなりの数の命を前にある種の緊張感を感じながら育ててきました。寒くないかな、暑くないかな、元気かなどうかなと日々観察しても、死んでしまった鶏もいます。獣に襲われた鶏もいます。たまごの販売を始めるのも手探りでした。割れないかなと不安になりつつ発送を始め、パズルのような定期便の仕組みを作りました。たまごが余ることも、欲しいという声にお応えできないこともありました。

そして、産卵開始から1年経ってさらに難しくなってきました。産卵をメインとする鶏は、産卵開始から1年の間にたまごの量も多く、質もいいものを産むように作出されています。つまり、1年過ぎると量も質も落ちてくるのです。そこで、もっとよく産むようにと対策をする人もいますし、屠殺して次の雛を飼う人もいます。私の場合は、試しに産卵から2年は飼ってみて、その結果をもとに今後決めていこうと考えていました。たまごの量が減ってもある分を売ればいい、殻の質は餌の配合を工夫してやってみようと。経営的な側面は置いておいて、実験のつもりで続けてみたいと考えいたんです。しかし、産卵開始から1年3ヶ月の今、その実験の難しさをすでに感じるようになりました。たまごの数が少ないのは季節の影響もあってあまり気にしていないのですが、殻の質の維持がとても難しくなってきました。殻が少々悪くても味は美味しい、と言ってくれる方もいます(ありがたいです!泣)が、販売は発送がメインなので殻が少し薄かったり大き過ぎると到着時に割れてしまいます。割れてしまっては商品にはなりません。

餌の配合でよくなったり、もとに戻ったりを繰り返す日々。それはそれで学びもあって面白いですし、春になったらまた変わるかもしれない、どうなんだろう、気になる!ああ、これはもはやプロジェクトエーーーーックス!

と、今は楽しんではいるのですが、出産を控えている私はその実験を見届けることができません。特に思い入れのある最初の鶏たちの変化を見届けられないことに悔しさを感じていました。夫に引き継ぐにしても、難易度が高くて見通しが効かないこの仕事をどう引き継げばいいのか私自身もわからなかったのです。そんな思いに気づき、やはり一旦終わりにして、このプロジェクトxはまたできる時に自分でやろうと決めました。

そもそも、いつ鶏に引退勧告を出すのかというのは養鶏をやっている以上、毎回悩むことなんだと思います。今回はたまたま妊娠出産がやってきて、そのタイミングがほぼ自動的に決まりました。特に最初はなかなか決断できないので、むしろほぼ強制的に決まってよかったのかもしれません。次に雛を飼うときもきっとぎりぎりまで悩むし、正解なんてわからないんだろうなと思います。それでも、きっといつかは私なりの、禾なりの形が見えてくるはず。そう信じて、晴れやかな気持ちで、彼らにお別れを告げようと思います。

今後の養鶏部門の再開時期は未定です。お腹の子が無事に生まれて、いつかの春にまた雛から飼い始めたいと思います。唐突に鶏を飼います!と言い始めた私を支えてくれた、家族、友人、近隣の方、右往左往しながら始めたたまごの販売を買い支えてくださった方、お世話になった全ての方に感謝を込めて。

近藤温子

豊かな山や森をつくるには

2022年12月10日

豊かな山や森をつくるにはどうしたらいいのかなぁと、ぼんやり考えています。

 

蒜山は標高500メートル前後のいわゆる中山間地域です。ここで農業をしていると周りの環境が気になってきます。川の水をひいて田んぼに入れるし、山からの湧き水を鶏たちは飲んでいます。森を吹き抜ける風が通り、菌や虫たち、動植物たちもたくさんいます。田んぼや畑はそれだけで完結するのではなく、大きな自然環境の一部であるといつも感じます。

 

そうして周りの山を見渡すと、植林された針葉樹林が目立ち、ナラ枯れなのか赤黒く染まった木や台風による倒木、笹が繁茂したり藪化した場所も多く、なんともいえない空気の淀みを感じたりします。今年は鹿や猪もよく田畑に入っていました。

 

6年前広島でお借りしていた家に、明治時代の写真が一枚残っていました。それを見たときに思ったのは、裏山がすごく遠くに見えるなぁということでした。当時はそれだけ人が山に入っていて、今では山が迫ってきているんだと思いました。同じようにこの蒜山も水がきれいで豊かな場所だとは感じるけれど、かつてはぜんぜん違った距離感で山に接していたんだろうと想像できます。昔がすべて素晴らしいとは思わないけど、もっと多くの人の手が入っていたという里山から学ぶこともありそうです。

 

私がいいなと思う姿は、水を豊かに蓄えられて、野の生きものたちが暮らせて(願わくば鹿も猪も少しだけ落ち着いてもらえる)、そんな山や森です。冬には雪が降りつもる地域で、春から秋は農作業に追われる日々で、そもそも自分の山ですらない中で、素人が長い時間をかけてゆっくりとでも関わっていく方法はあるのかな、と。冬になるとそんなことを考えてしまいます。

禾のお餅、販売をはじめました

2022年12月06日

12月2日朝、お昼にはみんな消えてしまうようなサッとした雪が薄く積もって、スノータイヤへの交換は午後にお願いしていたのになぁと思いながら、初雪にはしゃぐ息子がかわいくて、そんな今年もお餅の季節がやってきました。

冬、田畑の作業は落ち着いてきて、会いたい人に会いにいきたい季節でもあります。まずは鳥取・倉吉で「のぎ屋」を営む友人の田村家に連絡をして、今年もお餅をお願いしますと。それからずっと今年の米づくりがどうとか、子育てがどうとか、大きな薪ストーブで温もりながら時間を忘れて過ごします。お餅をつくりたいのか、遊ぶための口実がお餅なのか、そんなことを思ったりもするほど田村家は居心地がよいのです。

さて、お餅です。

今年初めて搗いてもらった白餅はとろりとしたなめらかないい味わいでした。オリーブオイルと醤油をあわせたり、きな粉とあわせたり、もう一袋でも食べられます。茹でたお餅をハサミで小さく切っても息子はなおゴホゴホしていて心配になりました。小さなお子さまには、焼いてお召し上がりいただくか玄米餅がおすすめです。どうかお気をつけください。

昨年も搗いてもらった玄米餅は変わらずによかったです。それまでずーっとお餅といえば白餅だったのに今では、やっぱり玄米餅っていいよね、と。やっぱりをつけたくなる自分がいるから不思議ですね。焼き目がついてもつかなくてもあまり気にせず、醤油をジュッとかけて海苔をまいたらこれもやっぱり一袋食べちゃえます。どうぞみなさまの冬のお供にも。

★お餅のお求めはこちらのオンラインストアから。