玄米煎餅ができました

2023年02月20日

今年もこのご紹介ができること、ほんとうにうれしく思います。

禾が扱うものできっと一番人気の玄米煎餅。こればっかりは、お待たせしました…!という言葉が自然に口から出てきます。私も一年間ずっと楽しみにしていました。

東京・足立にある日比谷米菓さんが焼いてくださるお煎餅。原料にお米は変わらず禾の亀の尾を、お醤油は今年からは日常的に愛用している福岡・糸島のミツル醤油醸造元さんの生成りをたっぷりとつかわせていただいた、ただそれだけの素朴ないいお煎餅です。

そして今年は大変心苦しいのですが値上げをさせていただきました(税抜600円→700円)。原材料の変更や加工賃の値上げ等が理由です。これからもいいと思うものをつくっていけるよう励みますので、どうぞご理解いただけますと幸いです。

お買い求めはオンラインストアから、どうぞよろしくお願いします。

 

 

さて、ここから先はぼやきです。よかったらどうぞお付き合いください。

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昨年の11月。今年もぜひお願いしますと職人さんに電話したとき、体調を崩してしまってもうできないかもしれないと言われました。幸い年明けには回復・再開されて、そのタイミングでお願いできました。その間2ヶ月ほど、一年前初めてつくってもらったときのことを何度も思い出しました。「おれももう年だからいつまでできるかわからないんですけどもね」と言われて、「いやいや〜そんなそんな。ずっとお願いしますよ!」と何も考えずに答えていた自分がいました。私にはどうすることもできないけれど、その言葉をほんとうには受け止めていなかったことを後悔しました。

 

農家として独立してから、つくり手がわかるものへの愛着や尊敬の念をつよく抱くようになりました。ひとりの個人や小さな組織がもつ技術、信念や生き様の結果としてうまれてくるものに、大げさかもしれないけど、魂のようなものが宿っていると感じるようになりました。でもそのすごさは同時に、顔の見えるあの人になにかあれば、あるいは気持ちが薄れたり移ろったりしたらもうそれでおわりなんだという、小ささや儚さと表裏一体なんだと身をもって理解しました。

 

先週お電話したとき、「売れ行き次第なんですが今年は夏頃にもう一回仕込みをお願いしたいんです」と伝えると、「約束はできないけど体が動かなくなるまではずっとつくってますから、また連絡してください!」と言われました。笑いながら、でも力強く言ってくれた言葉を今度はしっかり噛み締めながら、いろいろな願いを込めて保冷庫の手前のほうにお米を残してあります。もちろん自分だってどうなるかはわからないから、大切なものをちゃんと大切に、そうやって仕事をして生きていかなきゃいけないなと思いました。

お米の年間購入のお届けについて思うこと

2023年01月13日

1月。お米の年間購入をいただいている方々に向けて3回目のお届けを終えたところです。

今年、個人的には大きな挑戦をしました。それは発送するタイミングやお米の量、それから各月ごとの玄米と白米の選択も柔軟にしてみたことです。

 

それまでは「玄米か白米を5キロ毎月発送」と決めていました。これは在庫の管理、配送料、米袋の大きさや発送作業を考えてのことでした。ただこれだと量が多かったり少なかったりと、いろいろな声を頂いていました。それで個別にご相談いただいた方には量や発送頻度を調整してお届けしていました。

各ご家庭ごとに異なる食卓事情に細やかに寄り添っていきたい気持ちと、発送や管理作業をシンプルにしてなるべく田畑に向き合いたい気持ちと、どちらも嘘ではなく、どうしたものかなと悩んでいました。

 

ただ、長らくお米を食べてくれていた古い友人から、実はお米がけっこう残っていたという話を聞きました。言ってもらえれば止めていたのに…と思いつつ、とても申し訳ない気持ちになりました。初めからそういう話で買ってもらったんだよねと言えばそのとおりですが、食べてくださっている方を困らせてしまっては本末転倒です。それに全員が全員、わたしに声をかけてくれるわけではないんだと改めて気が付きました。

 

そんな経緯から、今回は気持ちを新たに、お申込みいただいた全員に事前にお伝えしようと決めたのでした。

 

実際3ヶ月やってみて、発送のパターンが多いので正直なところ大変は大変です。間違えていないことをただ祈ります。でも、これをやってよかったと今は思っています。

 

理由は2つあって、1つ目は誰かに無理をさせてしまっているのではという不安がなくなったことです。毎月5キロのお米は、少ないよと思う人には他でも買ってもらう必要があるし、多いよという人には余って困るだろうし毎月くること自体がプレッシャーにもなります。自分も定期購入しているものを食べ切れていなかったとき、あぁもう次が来ちゃった…と感じることは正直あります。はっきりと言われることがあまりないからこそ、みなさん大丈夫かなと心配になります。今回改めて全員に呼びかけてみて、量を減らしたり、時期をずらしたり、隔月まとめて発送にしたり、いろいろなご希望を頂きました。これを聞けてほんとうによかったと思いました。いまは心置きなくお届けできます。

 

そして2つ目は、ここに生活を感じられることです。オンラインストアでの販売を中心にしている私たちにとって、誰がどうして選んでくださったのか、どんな風に召し上がっていただいているのか、それを知る機会はほとんどありません。でも今回のお声がけをしてみて、これこれこうだから、こうしたいんですといったご要望を聞くことができて、純粋に、あぁそうなんだと思いました。毎月お送りする量が人によって違うことで、一つひとつの食卓に向かって自分のお米が確かに届いているんだなぁと。より実感を持てるようになりました。

 

とは言いつつ、このどちらも、つくり手のエゴのようなものですよね。食べてもらっている、ほんとうはそれだけで十分ありがたいことです。そこから更に安心感とか充実感とか、そういう人の温かさまで頂いているんだなと思います。

今季の大豆販売について

2023年01月04日

昨秋収穫した大豆がようやく乾燥と調整を終えました。想像していたようになかなかの低収量でした。

この少ない大豆をどうしたものかと、長くお取り扱いいただいているみなさまにお話して、ご希望通りにはお応えできないまますべての大豆のお届け先が決まりました。結果的に今年はオンラインストアでの一般販売は叶いませんでした。楽しみにお待ちいただいていた方には申し訳ありません。実ってくれた大豆に感謝して、次につなげたいと思います。

と、ここまでがご報告で、これから先は私の長〜いぼやきです。

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大豆は難しいです。3年目の昨年何かがすこしわかった気になって、4年目の今年何もわかっていなかったんだと気持ちを新たにしました。ゆるやかながらも、三歩進んで二歩下がるくらいの変化を感じるお米と違って、去年の豊作は何だったのか…と途方に暮れます。種まきまでの畑の管理、種まきの日程やその前後の雨と土の湿った感じ、種まきの深さ、土寄せの質やタイミング。どれも去年と同じか、すこし良くできたような手応えでしたが、秋の様相はぜんぜん違いました。稲刈りが終わってからの二週間、収穫作業に支障をきたさないよう畑の草を急いでとりつづける毎日でした。それに応じてか、収量もかなり厳しかったです。

 

今年の栽培はどんなイメージでやったらいいのか。あ〜〜、もう!大豆って…!! という気持ちです。

 

栽培も難しければ経営的にも悩ましいです。お米とは違い、大豆はそのほとんどが加工品の原料になります。一緒にがんばっている友人や仲間のような人たちが取り組むいいものづくりを、少しでもお手伝いできたらと思って続けてきました。そのために、毎年ある程度の決まった量をつくりたいと思っていて、8反(8,000㎡)ほどの作付面積を毎年調整して、平均して800キロ、理想的には1,200キロの生産を目標にしています。ただ現実はまだまだで収量は不安定です。経営だけを考えるならお米に専念したほうがいいので、例えば養鶏をおやすみする今年は大豆をやめてお米を増やすとか、しばらく縮小していくしかないのかなとも考えていました。

 

難しいポイントをつらつら書いていくと、まず圃場の条件です。禾はお米がメインなので、条件のよい田んぼではお米をつくっていて、大豆や麦は日照時間も短く獣の出入りも多い山あいになってしまいます。そもそも私が住む地域はほとんどの地目が水田で、水はけも良くない中でどうにか畑化して大豆を育てています。

 

それから設備投資です。8反というのは、手仕事でまかなえるよりはずっと多くて、本格的な農家さんよりはずっと小さいです。米や麦についても同じことが言えますが、どこまで設備投資をしていくか難しい微妙な規模です。まず、種まきをしてから2回行う土寄せ作業は小さな管理機だよりで、時間がかかるし疲弊します。田植えやその後の重要な初期除草、麦の収穫とも時期がかぶりながらも、貴重な梅雨の晴れ間をどうにか数日ずつ確保して乗り切りますが、いつもギリギリです。それから収穫、乾燥、選別などの後工程はすべて機械を借りるか委託でやっていて、自前ではありません。まわりの方々のご厚意に甘えつつも、どれも高価な仕事道具なので、大豆をほんとうに続けていくならこのままではよくありません。品種もいまはサチユタカのみです。いい大豆ですが、せっかくならお米のように在来種をいろいろ試してみたいです。ただ収量の不安定さや設備投資の難しさから、あまり深堀りができていません。

 

このままの規模を維持するためにも覚悟を決めて設備投資もしていくか、それとも1〜2反の規模で手作業を中心に小さくまとまっていくか。この冬で方向性を決めないといけないなと、ひとりでうんうん唸っていました。そんなときに、つい先日、ちょっと無理してがんばれば手が届く安価な中古機械の情報をいただいて、それで気持ちも固まって、来年からもこのままの規模でがんばろうと思い直しました。

 

大豆は大変で、だからこそなのか、お求めいただく声も大きいように感じます。そもそも大豆はこの50年ほどで生産面積は半分以下になり、いまでは国産は6〜7%しかありません。しかし大豆は自分が関わってきたものだけでも、お味噌、お醤油、お豆腐、きな粉、と日常の食卓に深く関わりのあるものです。小さくとも、毎年数人にでも数十人にでも、大豆を届けていけたらと思っています。